「風通しの良さ」は、英語で?

組織に求められる要素として良くでてくるキーワードに「風通しの良さ」という言葉があります。皆さんだったら、英語でなんと訳しますか?そもそも、風通しの良い組織と聞いたら、どんな組織を思い浮かべるでしょうか。

最近、M&Aアドバイザーの必読書として知った「JTのM&A(日経BP出版・新貝康司著)」を読んでいるのですが、この本の中で、著者は「風通しの良さ」を「Productive Tension(建設的な緊張感)」のある関係と呼んでいます。

JT(日本たばこ産業)は、ご存じの通り、グローバルでの巨大M&Aを数多く成約させ、日本企業の中でもトップをゆくいまや国際的な巨大企業です。私はこの”Productive Tension”という英語の表現を見て、なんだか一瞬で「ああ、日本企業のグローバル化に足りないのはこの感覚だな」と感じてしまいました。

著書内にもありますが、「風通しの良さ」は、単に仲良しクラブの意味ではありません。

「平時には良好な関係に見えても、有事に内部で揉めているようでは、強い組織とは言えません。有事こそ一枚岩になって課題に対処することが求められます。したがって、緊張状態にあっても建設的な議論のできる関係性が必要です。」

例えばM&Aのように多大なエネルギーを必要とし、かつ将来の経営を大きく左右しうる事態では、お互いに伝えたいことの言語化を避けている場合ではなくなります。いかにスピーディに、各メンバーと意思疎通を図って想定される課題に先回して対処する組織力が必要不可欠です。

それを日本人らしい「空気を読む」「阿吽(あうん)の呼吸」「何か問題が起きたら、協議の上、善処する」という感覚では、いつまでたっても強い組織は作られないでしょう。日本人の良さが、グローバル化の足を引っ張ってしまっているのだな、と改めて感じてしまいました。

本来は、組織には普段から建設的な議論を奨励する仕組み作りが必要なのですが、これはなかなか一筋縄ではいかないでしょう。著者は、Productive Tensionのある関係性を作る近道として「数多くの試練をともに乗り越える」ことだと述べていました。
この考えから(すべてではないですが)、JTでは、将来のM&A対策へ後ろ向きなオフィス系のメンバーに対して、とにかく(お尻🍑を叩いて!)邁進させるべく、実際にM&Aを成約させてしまって目の前に課題を突き付けて取り組ませてしまうという、いわば劇薬と投下したのです。

そんなことまでして強靭なグローバルチームが作りあげられた歴史があるのだと思うと、「多くの日本企業に見習ってほしいな」と感じつつも、同時にJTはものすごく困難なことをものすごいパワーで成し遂げてきたんだなと理解しました。

本の中で、Productive Tensionはチームワークを壊しかねない「毒」とも表現されていましたが、組織にとっては毒にもなり得るし、きっと薬にもなるでしょう。

「良薬は口に苦し」は有名なことわざですが、江戸のいろはかるたでは、この絵札には、薬ではなく臣下の忠言を苦い顔で聞いている殿様が描かれていたそうです。

耳障りの悪いことでも将来のためになることがある。この教えは「空気を読む」日本人とまるで真逆のようですが、本当は昔から知られている共通の価値観のはずです。