ネガティブな妄想に潜む敬意

つくづく人間はネガティブな生き物だなぁと思うことがあります。

Negativity bias(ネガティブ・バイアス)というのは、脳科学的には、太古の昔から人間が持っている「リスクの高い状況で賢い決断をするための能力」であるとされています。人間も動物も、脅威を予測できないとサバイバルできないという環境下で進化を遂げてきたわけですから当然でしょう。

そのネガティブバイアスについて科学的に詳しく綴ろうという気はないのですが、そもそも人間は油断するとネガティブ思考に陥りやすいということを、理性をもって生きる現代人は認識すべきだと思うのです。

皆さんも対人関係において「もしかしてあの人、私のことをこう思ってるのかも…😢」「こんな結果になってしまったのは、きっとあの人の考えが浅かったからだ💢」などと勝手に一人で妄想をして、相手に対して勝手にネガティブな感情を抱いてしまった経験があるではないでしょうか。

でも、いざ実際に会って直接話をしてみたら「あ、なんだ全然心配することなかった!🤣」「なんであんなネガティブに捉えてたんだろう!🤩」とあっさりとモヤモヤが解消してしまった、なんてこともあるのではないでしょうか?

これも人間が本質的に持っているネガティブ・バイアスに起因していると思っています。

ネガティブ・バイアスは決して悪いモノではありません。リスクを想定する力があるから、用意周到に仕事ができたり、有事に素早い対応をする準備ができるのです。ただ、対人関係・コミュニケーションにおけるネガティブバイアスは、もったいないことが大変多いように感じます。

根本的には、コミュニケーションの問題は、コミュニケーションでしか解決できないと思っています。相手にネガティブな想像をしてモヤモヤしているのなら、さっさと相手と対話するのが一番です。

M&Aの世界で、成立後に売り手と買い手がお互い直接コミュニケーションを図ることを避けて、相手へのネガティブな妄想がどんどん膨れ上がって、爆発寸前になった事例を見たことがあります。PMIがうまくいかない状況を相手のせいにして、責任転嫁するように相手の非を理屈っぽく主張していたのでした。

仕方ないので、直接じっくり話す場を設定したら「あ、そうだったの?🥺」と糸も簡単にアッサリと解決してしまいました。モヤモヤしていた数ヶ月間は全くの無駄でしかありませんでした(私も疲れました)。

「相手はきっとこう思ってるはずだ」とネガティブな妄想をすることは、単に「相手から自分に向けて発せられる可能性のある脅威」を想像しているだけに過ぎず、実は相手の気持ちを考えているとは全く言えません。

もし本気で相手の気持ちを考えたかったら、相手が自分に降臨したとおもって時間をかけてじっくりと考えてみてください。

コーチングの場面では、これを「ポジションチェンジ」というやり方で解決させることがあります。対人関係を解決する手法なのですが、実際に二つの椅子(自分の立場と相手の立場)をつかって、それぞれのポジション(椅子)に座って、両者の気持ちをじっくり時間をかけて考えることをします。

すると意外に、ポジティブな思考が生まれることが多く、本心では「相手は自分のことを認めてくれている」と気づいたりするのです。やってみると非常に気づきが多いもので、いかに人が幼少期から教わる「相手の立場に立って物事を考える」という倫理観を実践できていないことがわかったりします。

M&Aの場面では特に、売り手と買い手はお互いに経営者として「M&Aを実行するに値する」と決断をした相手ですから、基本的には相手に敬意があるはずです。ですから、ポジションチェンジをしてみて本気で相手の立場に立って考えることを試してみれば、きっと相手の自分への敬意に気づくことができるし、自分も相手への敬意を取り戻すことができるでしょう。もちろんそれ以上に、コミュニケーションを密に図る努力をすることは大前提ですが。

人間のネガティブな性質に惑わされることなく、相手との対話の機会をちゃんと作ること、そして本当の意味で相手の立場に立って気持ちを考えることが、M&Aだけでなくどんな場面においても必要だとおもいます。