株式譲渡と事業譲渡  ―①

今回はM&Aの基本知識のお話です。

「株式譲渡」と「事業譲渡」の違い、皆さんはちゃんと区別できていますでしょうか?

M&A初心者にとってはわかりにくいのかもしれません。(私も数年前はそうでした!)

今回は私なりの言葉で、ごく簡単にご説明したいと思います。

株式譲渡とは。

まず文字通り、会社の「株式」を他者へ譲渡することです。

では、会社の株式を譲渡するとはどういうことか?

簡単に言いますと、その会社の株式を譲受された新しい株主は、その会社の「権利」も「義務」も、「すべて」を譲受することを意味します。

では、「権利」「義務」とは何か?

その中身は財務諸表で考えていくとわかりやすいです。

基本的には株式譲渡を実行すると、財務諸表にあるすべての資産・負債を、新しい株主が継承することになります。「権利」≒「資産」であり、「義務」≒「負債」と考えていただければと思います。下記に例として挙げてみます。

★資産(権利)
・例えば売掛金。売掛金は近い将来、キャッシュをもらう権利ですね。

・棚卸在庫。商品として販売することができ、売掛金に変えることができる権利です。

・あるいは有価証券。対象会社がどこかの会社の株式を持っていて支配する権利を持っていたとしたら、その支配権も対象になりますね。

・他にも事業運営に必要な許認可や、特許や商標などのライセンスももちろん含まれます。

★負債(義務)
・買掛金。これは売掛金の逆で、仕入先にキャッシュを支払わなければいけない義務ですね。

・借入金。銀行などに返済しなければならない義務です。

・他にも例えば、退職給付引当金。これはいつか従業員へ退職金として支払わなければいけない義務です。

株式を譲渡すると、上記のような資産・負債が自動的にすべて譲渡されるため、買い手としてはM&A成立の前にどの資産・負債を継承するのかをしっかり把握することが重要です。

なぜなら、リスクとして、財務諸表に載っていない「隠れた負債(義務)」がある可能性だっていくらでもあるわけですから。この隠れた負債を「簿外債務」と言います。

簿外債務の例としては、未払残業代や、中小企業なら未払法人税(滞納していたりする場合)も考えられます。もしくは、退職金を負債として積み立てていなければ、それも含まれるでしょう。

また逆に、譲受できる権利だと思っていた資産(権利)を時価に換算してみたら価値がゼロに等しかった、なんてこともありえますので、財務諸表通りの資産価値であると考えるのは早計です。

こういったリスクを明確に把握し、継承する実態の資産・負債(権利・義務)を明確にするために、DD(デューデリジェンス/買収監査)は大変重要になってきます。

次回は、事業譲渡のお話に続きます。