今回はM&Aの基礎知識として、クロージングパッケージのお話です。

株式譲渡の成約のためには、どのような書類が必要になるのかについてお伝えしたいと思います。
譲渡実行時に、その一切の法的手続きに必要となる書類すべてをまとめて「クロージングパッケージ」と呼びます。

株式譲渡の法的手続きのベースとなる法律は、「会社法」です。

WEBで条文を見ることができます。⇒会社法WEB

会社法 第百二十七条以降あたりに「株式の譲渡」という章がありますので一読すると理解が深まると思います。

手続きとしては、下記の通り。(あくまでざっくりとした概要であり、順番含め下記の限りではありません。)

①株主は、第三者に株式を譲渡したい際に、対象会社の株主総会に対して「譲渡承認請求」を行います。

②そして、株主総会により株式譲渡(対象株式・譲渡先)について決議されます。
 「株主名簿書換請求」もされるため、それに対する承認も行われます。 

③売主側の株主総会によって、株式譲渡が承認されると、株式譲渡契約を締結(調印し決済)します。
 買主側も当然、株主総会or取締役会によって、株式譲受についての承認を経て株式譲渡契約を締結(調印し決済)します。

④株式譲渡完了と同時に、代表者が交代する場合には代表者の辞任届を用意します。
 代表者を登記上変更するためには、旧代表者の辞任届と、新代表者の就任承諾書が必要となります。

⑤旧株主名簿から、株式譲渡を経て新株主名簿に書き換えます。
 株券発行会社の場合は、物理的な株券も用意し、新株主に渡します。

上記の全体の流れを踏まえ、クロージングパッケージとしては、ざっと下記のような書面が必要となります。

【売主側】
・株主名簿書換請求書(株主より対象会社の株主総会へ提示)
・株主総会(or取締役会)議事録(株式譲渡についての承認)
・株式譲渡書換承認通知書(旧株主宛)
・旧/新株主名簿
・代表者辞任届
・(決済後)譲渡対価受領証(要印紙)
・印鑑証明(株主・対象会社の代表印)

【買主側】
・株主総会(or取締役会)議事録(株式譲受についての承認)
・代表者就任承諾書(登記上の代表者変更に必要)
・印鑑証明(新株主)

・株式譲渡契約書

【その他】
・株主が親族で複数いるケースで、例えば過半数の議決権を保有している株主兼社長に、株式譲渡先やその対価の決定、またその対価の受領を一任するケースがよくあります。その委任状もクロージング時に一緒に提出するケースもあります。

リーガルチェックに時間がかかるのは株式譲渡契約書(SPA)ですので、早めに両者に回しておくことが大切です。リーガルチェックの順番は、売主⇒買主の順が多いように思います。商習慣かなと思いますが、「譲渡契約書」であって「譲受契約書」ではないので、ベースを売主視点で固めるというのがあるのかなと思います。(ただ、どちらでもよいのではないかなと思います。)

株式譲渡契約書には必ず、譲渡完了した時点で売主から買主に提出する「重要物の引き渡し」という項目があります。代表印・銀行印や通帳などの大事なモノもそうですが、SPA含め、上記のクロージングパッケージの書類も含まれますので、弁護士さんへの相談も含めて、抜け漏れなくチェックしておきたいですね。

今回は、アドバイザーとしての基礎知識のお話でした。