「ロックアップ」という言葉、聞き慣れないけれど実はM&Aの現場でとても重要な役割を果たしています。🤝取引後のトラブルを防ぎ、双方が安心して次の一歩を踏み出すための工夫が詰まったこの仕組み。その実態や実際の事例を、わかりやすくご紹介します。

1. 📝 ロックアップとは何か?基本的な意味と目的

ロックアップとは、M&A取引や株式譲渡の際に一定期間、株式や経営権の売却・譲渡を制限する契約条項です。この仕組みにより、譲渡直後の混乱や株価の急落、経営の不安定化を防ぐ役割を果たします。2025年時点で、中小企業庁や日本証券業協会のガイドラインでも、ロックアップの活用が推奨されています。

たとえば、2024年に実施された東京都内のIT企業のM&Aでは、売り手経営者が3年間は保有株式の追加売却ができないというロックアップが設定されました。これにより、買い手企業は経営のスムーズなバトンタッチと、事業継続による信頼の維持を図りました。このケースは社内関係者や取引先にも安心材料となり、組織の安定化につながっています。

複数の上場企業でも、IPO前後やM&A実施時にロックアップ期間を半年から3年程度設けることが一般的になりました。ここで大切なのは、単に「縛る」だけでなく、成長や価値創出の観点で両者の意欲や信頼を守ることです。オリジナルな工夫として、成長目標の達成度に応じてロックアップ期間を短縮するインセンティブ型の条項を加える企業も増えており、効率的な事業承継や成長促進に活用されています。

ロックアップは形式だけでなく、「どんなリスクを防ぎ、どんな信頼関係を築きたいのか」明確に意識した設計が重要です。

2. 🔒 ロックアップ条項の仕組みと具体的な内容

ロックアップ条項は、M&A契約や株式譲渡契約の中で、一定期間売却や譲渡を禁止・制限する内容が明記されています。日本取引所グループの公開企業を中心に、「〇年間は持ち株の○%を売却しない」といった文言が一般的に用いられています。また、経営者の場合には、役員として一定期間は会社に残ることを条件とする契約も見られます。

  • 売却制限期間(例:1〜3年)
  • 対象となる株式や資産の範囲
  • 例外条項(死亡・重病時や、親族への譲渡など)
  • 違反時のペナルティ(違約金や契約解除など)

例えば、2025年春に行われた関西圏の製造業の事業承継型M&Aでは、前経営者に対して「2年間は保有株式を外部に売却できない」と明記。さらに、経営ノウハウが引き継がれるよう「取締役に最低2年間は残留」という条項も併記されていました。違反があった場合には、契約金額の一部返還というペナルティも設定されています。

経験上、ロックアップの内容は「型どおり」にせず、事業の特性や関係者の想いを反映したアレンジが有効です。例えば、地元の重要な取引先が多い事業の場合、主要取引先との取引維持を追加条件に組み込むことで、さらなる信頼確保につなげる動きも見られます。

3. 🚩 過去のM&A取引で見たロックアップの実例

ロックアップの実例は国内外で数多くあり、その内容も企業規模や業種によりさまざまです。中小企業のM&A現場でも活用が進んでおり、事業の安定化や信頼醸成に役立っています。

例えば、2023年に東海地方の自動車部品メーカーが事業承継型M&Aを実施した際、創業家が持つ全株式のうち80%に3年間のロックアップを設けました。残り20%は急な資金需要等に備え流動化が認められる設計とし、買い手企業・売り手双方の安心が両立できる形となりました。

  • 関西の医療用機器販売会社:2024年の買収時、経営陣3名が2年間退職せず経営に関与することで主要取引先の信頼維持を重視。ロックアップ違反時には段階的な違約金が課される内容でした。
  • 上場準備中のIT企業:IPO直前の2024年、主要株主に180日間のロックアップを設定。突発的な株価下落リスクを抑える目的で、ベンチャーキャピタルや役員も対象に含めて調整が行われました。

オリジナルな視点として、地方の食品加工会社のM&Aでは、「地元従業員の雇用維持」を条件としたロックアップ条項も話題となりました。単なる株式譲渡の制限だけでなく、事業や地域を守る工夫としてロックアップが発展しています。

4. 💡 ロックアップがもたらすメリット・デメリット

ロックアップの導入は、企業や取引関係者にとって多くのメリットをもたらしますが、一方で注意すべきデメリットも存在します。双方の側面を理解しておくことが、実際の契約を円滑に進める上で大切です。

メリット デメリット
  • 経営安定:前経営者や主要株主の突然の離脱や大量売却を防ぎ、会社の信用や従業員の安心感につながります。
  • 取引先・顧客の信頼維持:実例として、東京都内の食品卸売会社で、ロックアップ条項を設けたことで主要取引先からの契約更新率が上昇した事例もあります。
  • 株価の下落リスク回避:IPO時にも不可欠で、投資家保護の観点からも証券取引所が活用を推奨しています。
  • 資金流動性の制約:持ち株を売却できないため、急な資金ニーズへ対応が難しくなる場合があります。
  • 柔軟な経営判断が困難:自社株売却による再投資や新規事業参入の選択肢が狭まる恐れがあります。
  • 関係悪化時のリスク:事業環境の変化や人間関係のトラブルが起きた際、条項が重荷となるケースも実際に目立っています。

ロックアップを設計する際は、解除条件や例外条項を設けておくことで、リスクを最小限に抑えるアレンジが有効です。

5. 🤔 ロックアップ契約時に注意すべきポイント

ロックアップ契約を締結する際には、条項の設計や運用方法に細心の注意が求められます。安易にひな型だけに頼らず、個々の事業や関係者の状況を把握した上で、柔軟に調整を行うことが重要です。

  • 期間の妥当性:事業の引き継ぎや信頼構築に必要な年数を十分に協議し、一律ではなく事業内容や当事者双方の希望を反映させることが大切です。九州の医療関連企業では、地域特性を加味し通常より長めの3年と設定されていました。
  • 例外条項や解除条件:死亡・重病・災害時には柔軟な解除が可能となるよう、経済産業省の手引きも参考に適用範囲を明記します。これにより予期せぬリスクもカバーできます。
  • 違反時のペナルティ設計:違反時の違約金額や契約解除の条件を明確に定めることで、トラブルの未然防止につながります。
  • 関係者の納得度:全ての利害関係者が内容を十分理解し、合意しているか確認しましょう。経営権が分散する場合や親族企業では、説明会を設けて丁寧な対話が成功の鍵となります。

独自の工夫として、主要従業員へのインセンティブプランと組み合わせてモチベーション維持を図る事例も見られます。

まとめ

ロックアップは単なるルールではなく、事業や人との絆を守るための大切な工夫です。円滑なM&Aや事業承継を成功させるカギは、内容をひとつずつ丁寧に話し合い、関係者全員が納得する形に仕上げること。柔軟に意見を取り入れ、自社ならではの仕組みにアップデートする姿勢が、安心と成長の土台となります。信頼できる専門家とともに、一歩踏み出す準備を始めてみてはいかがでしょうか。